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生理不順(月経不順)とは

女性なら誰もが経験する生理ですが、基本的には1ヶ月に1回起こることがほとんどです。しかし、中には周期が乱れていたり、出血が長期間続いたりと、生理に異常が見られることがあります。まずは生理不順がどのような状態を指すのか詳しく見ていきましょう。

正常な生理と生理不順について

<正常な生理>

・生理周期:2538

・出血が続く日数:37

生理周期とは、生理開始日から次の生理が始まる前日までの日数のことです。正常な生理は2538日周期で起こり、出血は37日続きます。生理周期が1週間ほどずれるケースもありますが、ほとんど問題はありません。
生理不順とは上記の定義に当てはまらない生理のことを指し、主に2種類に分けられます。

 

<生理不順>

①生理周期の異常

②生理期間・量の異常

ご自身の生理にどのような異常が現れているか確認してみましょう。

【①生理周期の異常】頻発月経:生理周期が24日以下

頻発月経とは生理周期が24日以下と短く、1ヶ月に23回生理が来るような状態のことです。ホルモンバランスの乱れが主な原因で、思春期や更年期に起こりやすいといわれています。思春期に起こる頻発月経は、体の成熟に合わせて改善されることが多いです。更年期の場合は卵巣機能の低下が疑われるため、ホルモン補充療法が適応される場合があります。

頻発月経の中でも「無排卵周期症」は問題視されています。無排卵周期症は生理のような出血はあっても排卵がなく、少量の出血が1週間以上ダラダラと続く状態です。特に問題のない場合もありますが、原因によっては妊娠しにくくなったり他の病気になったりするリスクがあります。

【①生理周期の異常】稀発月経:生理周期が39日以上~3ヶ月未満

稀発月経は生理周期が39日以上~3ヶ月未満と長い状態のことです。女性ホルモンの分泌量が減少している可能性があり、稀発月経の中でも排卵がない場合は不妊の原因になることがあります。

【①生理周期の異常】無月経:3ヶ月以上生理が来ない

無月経は3ヶ月以上生理が来ていない状態のことをいいます。

①原発性無月経:生まれてから一度も生理が来ていない

②続発性月経:生理はあったが来なくなった

無月経には上記の2パターンあり、続発性無月経は第一度と第二度に分けられます。

・第一度無月経:女性ホルモン「プロゲステロン」のみが減少している状態です。プロゲステロンを投与すると出血がみられます。過度なダイエットやストレスによるホルモンバランスの乱れが原因の無月経は、第一度のケースがほとんどです。

・第二度無月経:女性ホルモン「エストロゲン・プロゲステロン」の2つが減少している状態です。2種類のホルモンを投与することで出血が起こります。

排卵のない無月経を放置すると不妊の原因になるだけでなく、閉経後は骨粗鬆症などの病気を引き起こす可能性があります。

【①生理周期の異常】不整周期月経:生理周期がバラバラ

生理周期にバラツキがあることを不整周期月経といいます。生理周期の一番長いときと短いときの差が7日以上ある場合は不整周期月経が疑われるでしょう。思春期や更年期などのホルモンバランスが乱れやすい時期に起こることが多いです。

【②生理期間・量の異常】過多月経

過多月経とは生理期間が1週間以上、経血量が多い、血の塊が混じるといった状態のことです。過多月経の原因はホルモンバランスの乱れだけでなく、婦人科疾患が関係することもあります。出血量が多く貧血にもなりやすいため、過多月経の方は婦人科の受診が必要です。

【②生理期間・量の異常】過短月経・過少月経

過短月経は生理が2日以内で終わること、過少月経は経血量が少ない状態のことをいいます。毎回の生理でナプキンを使わず、おりものシートでも問題ないという方は過少月経の可能性が高いでしょう。

過短月経・過少月経は女性ホルモンの分泌量が少ないことが原因として考えられていますが、子宮の発育不全や無排卵周期症状、甲状腺機能の異常などが原因のこともあります。

また、最近では若い年代でも更年期障害を発症することがわかっており、30歳代後半から女性ホルモンの減少に伴う更年期症状が見られる方もいらっしゃいます。

生理の期間が短すぎる、経血量が少なすぎる場合には一度婦人科を受診するようにしましょう。

生理の仕組みについて

生理は毎月来るものと思っている方は多いですが、そもそもなぜ生理が起こるのか、そのメカニズムについて詳しく理解できている方はそれほど多くないでしょう。生理不順を改善するためにも、生理が起こる仕組みについて知っておくことが重要です。

生理が起こるメカニズム

生理は子宮内膜が剥がれ落ちることで起こります。子宮内膜とは赤ちゃんのベッドのような役割を果たす組織で、排卵が起こると子宮の内側の壁がどんどん厚くなっていきます。

排卵した卵子と精子が結びつき受精卵ができると、子宮内膜にくっつき(着床)妊娠となります。しかし、受精卵が着床しなければベッドは必要なくなるため体外に排出されます。この子宮内膜が排出される現象が「生理」です。

生理には卵胞ホルモン「エストロゲン」と黄体ホルモン「プロゲステロン」の2つの女性ホルモンが関係しています。これらのホルモンが相互に作用することで生理が起こるのです。

また、ホルモンの働きによって生理から生理の期間は2つの時期に分けられます。

<卵胞期>

生理後~排卵までの期間を卵胞期と呼びます。卵胞ホルモン「エストロゲン」の分泌量が増え、心も体も元気に過ごせる時期です。

<黄体期>

排卵~生理開始までの期間を黄体期と呼びます。黄体ホルモン「プロゲステロン」の分泌量が増え、子宮内膜や乳腺を整えるなど妊娠の維持に必要な働きをします。イライラしたりむくみが出たりと心と体にとって嬉しいとはいえない変化が起こる時期ですが、妊娠のための大切な時期といえます。

生理は女性ホルモンの働きによって起こりますが、ホルモンバランスの乱れや分泌量の低下などが原因で生理不順を起こします。生理不順は放置すると不妊に繋がる場合もあるため、早めにクリニックを受診しましょう。

不正出血(不正性器出血)とは

生理以外で出血が起こることを不正出血(不正性器出血)といいます。不正出血の原因は多岐に渡り、ポリープや子宮筋腫などの良性の病気や子宮頸がん、子宮体がんなどの悪性の病気もあります。閉経後の出血は悪性の病気が原因のことがあるため、早めに病院を受診しましょう。また、受精卵が着床するときに出血する(着床出血)こともあるため、妊娠の可能性がある場合は妊娠検査薬で確認してください。

生理が来ない8つの理由

生理が来ない理由は主に8つあります。ご自身の生理が来なくなった理由に心当たりがないかチェックしてみましょう。

年齢(未成年・更年期の女性)

初潮を迎えるのは平均で1014歳ですが、まだ身体が成熟していないため生理周期も不安定です。思春期の生理不順は20歳くらいになると整っていきます。

また、閉経が近づく時期には卵巣機能が低下し女性ホルモンの分泌量が減少することで生理不順になることがあります。

ストレス・疲労・環境変化

ストレス社会といわれる現代では、強いストレスによってホルモンバランスが乱れ、生理不順になるケースも多いです。人間関係のストレス、働きすぎによる過労、職場や家庭の環境変化などが思い当たる方は、ストレスが原因で生理不順が起こっているのかもしれません。

肥満

肥満の女性は無排卵や無月経になりやすいといわれています。また、妊娠中や出産時のトラブルにも繋がるといわれているため、太り気味の方は注意が必要です。

激しすぎるスポーツ・過度なダイエット

激しすぎるスポーツやダイエットをすると、身体は過度の栄養不足・疲労状態に陥ります。すると生命維持が最優先されるため、脳が妊娠しないように妊娠の仕組みを止めてしまうのです。その結果生理不順を引き起こします。

多のう胞性卵巣症候群(PCOS

多のう胞性卵巣症候群とは、卵巣の中で卵胞(卵子が入っている袋)が十分に育たず、たくさんの小さな卵胞ができてしまう病気です。通常、排卵に向けて数十個の卵胞が育ち始め、その中の1個だけが十分に成長して排卵されます。それ以外の卵胞は成長を止め小さくなっていくのです。しかし、多のう胞性卵巣症候群の場合は卵胞が育たず排卵が定期的に起きないため、不妊症の原因になってしまいます。

高プロラクチン血症

プロラクチンと呼ばれるホルモンは出産後に分泌され、母乳の分泌を促したり排卵を抑制したりする働きがあります。何らかの原因で妊娠・出産していない時期にプロラクチンが過剰に分泌されると、生理不順を引き起こしてしまいます。

甲状腺の病気

甲状腺疾患(バセドウ病や橋本病など)が原因で生理不順になることがあります。また、甲状腺疾患は2040歳前後の女性に多くみられ、不妊や流産の原因になることもあります。

早期卵巣機能不全(POI

40歳になる前に卵巣機能が低下し生理が来なくなることを早期卵巣機能不全(POI)といいます。生理が3ヶ月以上なくなったり、女性ホルモンの分泌量が減少した状態が続いたりすることで、更年期障害の症状が現れることもあります。

生理と年齢の関係

年齢によって生理の状態は変わっていきます。また、受診が必要になる目安も異なるため、下記を参考に病院の受診を検討してください。

20歳以下

小学生~中学生くらいで初潮が起こり、その後数年間はほとんどの方が生理不順です。そのため中学生や高校生の生理不順はそれほど問題ないでしょう。身体の成熟に伴い生理の周期も安定していくため、20歳代前半には規則的な生理になっていきます。ただし、3ヶ月以上生理が来ない場合は婦人科疾患や将来の不妊に繋がる可能性があるため、婦人科を受診するほうがよいでしょう。

2045

身体が成熟している2040歳の女性で生理不順気味の場合は、病院でホルモン値などを調べるほうがよいでしょう。婦人科疾患や不妊の可能性があります。

45歳以上

45歳以上で生理不順になったら更年期障害や婦人科疾患の可能性が考えられます。早めに受診し検査を受けましょう。

生理不順(月経不順)で婦人科を受診するタイミング

生理不順の方でいつ病院に行けばよいかわからないという方は多いです。また、そのうち生理が来るだろうと放置される方も一定数いらっしゃいます。しかし、生理不順は身体からの大切なSOSサインです。将来の不妊や婦人科疾患に繋がる可能性もあるため、早めにクリニックを受診しましょう。クリニックを受診する目安をお伝えいたします。

今回だけ1週間ほど遅れている

生理が1週間ほど遅れることは健康な方でも起こるため、それほど心配する必要はないでしょう。ただし、妊娠の可能性がある方は妊娠検査薬を使用してください。陽性の場合はすぐに受診が必要です。

また、生理不順が続いたり生理が来なくなったりした場合は婦人科を受診しましょう。

生理周期は不規則だが3ヶ月以上あくことはない

0歳代の場合は様子をみても大丈夫でしょう。20歳以上で生理周期が不規則な場合は婦人科の受診をおすすめします。

3ヶ月以上生理がこない

生理が3ヶ月以上来ない場合は無排卵の可能性があるため、早めに婦人科で検査を受けましょう。ただし、初潮から23年の場合はもう少し様子をみても問題ありません。

半年以上生理がこない

年齢に関わらず、生理が半年以上来ない場合は女性ホルモンの分泌量に問題がある可能性が高いため、早めに婦人科を受診するようにしましょう。

ダイエット・過度な運動が原因で生理がこない

ダイエットや過度な運動のせいで生理が止まった場合はすぐに婦人科を受診しましょう。

生理不順(月経不順)を放置すると不妊症のリスクが高まることも

生理不順を放置すると将来妊娠しにくくなる可能性があります。また、卵巣機能に悪影響を与え、がんリスクや骨粗鬆症リスクの上昇にも繋がります。

1週間程度の遅れであればそれほど心配はいりませんが、生理不順が繰り返し起こる場合は早めにクリニックを受診しましょう。早期に治療をすることで将来の不妊リスクを減らすことが可能です。

生理不順(月経不順)の検査

生理不順で受診された方には、必要に応じて下記の検査を受けていただきます。

検査内容

生理不順で受診された方には、まず妊娠しているかを確認させていただきます。問診と尿検査によって妊娠しているかどうかわかります。妊娠していない場合は婦人科疾患がないか、内診・経膣超音波検査・細胞診検査・血液検査などで確認します。

思春期の女性で内診に抵抗のある方は多いですが、性行為の経験がない場合には内診を省略できることがあります。明らかな病気がなく生理周期が乱れている場合は、排卵していないケースが多いです。その場合は基礎体温表をつけていただき、排卵の有無や卵胞期・黄体期の期間などを確認します。

基礎体温について

基礎体温とは、生命維持に必要な最低限のエネルギーしか使っていない状態の体温のことです。すなわち寝ている間の体温のことを指します。

女性ホルモンのバランスによって基礎体温は変化するため、毎日起床時の体温を測ることで排卵の有無や卵胞期・黄体期の期間がわかります。基礎体温表があることで受診時に医師が正確な診断をしやすくなります。

<基礎体温の計り方>

①朝起きたら寝たままの状態で婦人体温計を舌の裏に挟みます。

②口を閉じ検温ができたら基礎体温表に記入します。

生理不順(月経不順)の治療

生理不順の治し方はタイプによって異なります。各治療方法については下記をご確認ください。

頻発月経

生理周期を安定させるためにピルやホルモン製剤が処方されることが多いです。妊娠を希望される方には排卵誘発剤が処方されるケースもあります。

稀発月経・無月経

原発性無月経(今まで生理が来たことのない状態)または続発性無月経(生理は来たことがあるが今は来ていない)によって、また妊娠を希望しているかによって治療方法が変わります。

<原発性無月経の場合>

生まれつき処女膜や膣が閉鎖している場合には手術が適応されます。また、ホルモンに異常がある場合はホルモン療法を行います。なお、染色体異常で生理が来ていない場合は生理の発来が望めません。

<続発性無月経で妊娠を希望する場合>

妊娠を目的とした排卵誘発剤による不妊治療を行います。この治療によって結果的に生理周期も安定してくることが多いです。

<続発性無月経で妊娠を希望しない場合>

プロゲステロンを補充し、それでも生理が再開しない場合はエストロゲン・プロゲステロン両方のホルモンを補充します。また、低用量ピルを用いるケースもあります。

過多月経

ホルモン分泌の異常が原因の場合はホルモン製剤、婦人科疾患が原因の場合は病気に合わせた治療を行います。

過少月経

ホルモン分泌の異常が原因の場合はホルモン製剤による治療を行い、子宮や卵巣の異常が原因の場合は手術を行うケースもあります。排卵の有無を確認し、排卵がなければ排卵誘発剤を処方することもあります。

全ての生理で必要な対策

生理周期を整えるためには生活習慣の見直しも重要です。太り過ぎても(BMI25)痩せすぎても(BMI18)生理不順の頻度は高くなるため、適正体重(BMI2223前後)を維持できるよう心がけましょう。また、過度なダイエットは無月経を誘発するためやりすぎは禁物です。早寝早起きで生活リズムを整え、適度にストレスを発散するようにしましょう。タバコを吸っている方は禁煙をおすすめします。

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