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目次
性感染症(性病)とは
性感染症は性的接触によって感染する病気です。性病やSTI(Sexually-transmitted Infections)とも呼ばれており、症状がない方もいらっしゃいます。女性よりも男性のほうが自覚症状が出やすいためクリニックを受診する機会が多いですが、女性は自覚症状が出にくいため受診が遅れることが多いです。その結果、女性の場合は症状が進行して不妊に繋がったり、感染を拡大させてしまったりと、さまざまなトラブルに発展します。性感染症は感染の自覚がなくても定期的な検査を受けることが重要です。
感染経路は「キス」「セックス」「血液」
性感染症は粘膜や皮膚から感染しますが、主な感染経路は「キス」「セックス」「血液」です。セックスの中には膣性交だけでなく、オーラルセックス(口腔性交)やアナルセックス(肛門性交)も含まれています。また、妊娠中の女性が性感染症にかかると母子感染してしまい、赤ちゃんに先天性の障害が生じる原因になるのです。さらに、粘膜が傷つくことでHIV(ヒト免疫不全ウイルス)など他の疾患にかかりやすくなります。
性感染症(性病)の主な症状
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デリケートゾーンに痛みやかゆみがある
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デリケートゾーンにブツブツ(イボ・水ぶくれ)がある
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下腹部が痛い
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おりものの量が増えた
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おりものの色がいつもと違う
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おりものの臭いがきつい
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性行為後に排尿痛がある
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性行為後に性器から出血がある
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発熱している
このような症状が見られる場合は性感染症の可能性が考えられます。性行為の際にコンドームを使用しなかった、パートナー以外と性行為をした、複数の人と性行為をしている場合は性感染症の確率が高まります。
いつもと違うと感じたら早めにクリニックを受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
性感染症(性病)は正しい知識を持つことで予防できる
性感染症は性行為によってうつる病気ですが、性行為自体を避ける必要はありません。正しい知識を身につけることで性感染症は防げるため、安心して性行為をするためにも性感染症についてきちんと理解しておきましょう。
・必ずコンドームを使用する
・信頼できるパートナーとしか性行為をしない
この2点を守ることが特に重要です。コンドームは射精前につけるのではなく、挿入前からつけるようにしてください。性感染症は口腔粘膜から感染する場合もあるため、オーラルセックスでもコンドームはつけるようにしましょう。コンドームの使用で100%性感染症を防げるわけではありませんが、高い確率で予防はできるため必ず使用してください。
また、不特定多数の人と性行為をするほうが感染確率は高まってしまいます。感染する確率を下げるためには、信頼できるパートナーとだけ性行為をするようにしましょう。
近年急激に増加しているのが「梅毒」
性感染症の中でも近年急激に増加しているのが「梅毒」です。梅毒に感染すると性器にしこりやただれ、皮膚に発疹ができます。2014年と2022年の患者数を比べると、男性は6.8倍、女性は12倍に増加しており、特に15~24歳は女性の報告数が男性よりも多い結果となっています。
性感染症(性病)一覧
性感染症は主に8つの種類に分けられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
トリコモナス
トリコモナスは膣トリコモナスと呼ばれる原虫(ゾウリムシのような微生物)が性器に入り込むことで起こる性感染症です。性行為による感染が多いですが、トイレ・お風呂・タオル・下着から感染することもあるため、性行為の経験のない女性や小さな子どもにも感染する可能性があります。また、感染者数は減少しつつありますが、中高年層で見られることが多いです。男性の場合は性行為後に排尿することで予防できるといわれています。
症状
<女性>
・外陰部の痛み、強いかゆみ
・膣の痛み、強いかゆみ
・泡状で悪臭の強いおりもの
<男性>
・尿道からの膿
・軽い排尿痛
検査方法
<女性>
膣ぬぐい液を採取して調べます。
<男性>
初尿、膿を採取して調べます。
治療方法
①トリコモナスと診断
②内服薬の使用
5-ニトロイミダゾール系(フラジール)のお薬を約10日間服用します。
女性の場合は腟錠を使用することもあります。
③再検査
症状がなくなったこと、膣トリコモナスがいなくなったことを確認します。
女性の場合は次回の生理後に再度検査をするのが望ましいです。
性器ヘルペス
性器ヘルペスはヘルペスウイルスに感染することで起こる病気です。ウイルスは2種類あり、口周りにできる口唇ヘルペスは1型、性器周辺にできる性器ヘルペスは2型のものといわれていました。しかし、最近ではオーラルセックスが一般化されつつあるため、1型と2型の区別がなくなってきています。
ヘルペスは一度感染すると完治することがなく、ウイルスは神経節に潜伏します。ストレスや過労などが原因で再発することが多いです。
症状
<女性>
~初めて感染して症状が出たとき(初感染)~
・水ぶくれやただれ
・強い痛みで排尿が困難になる
・発熱
・太もものリンパ節の痛みや腫れ
これらの症状は外陰部・膣の入口・おしりに現れますが、子宮頸管や膀胱まで感染が広がるケースもあります。
~感染時には症状がなくその後初めて症状が出たとき~
初感染時よりも症状は軽く、治るまでの期間も短いです。
~再発時~
疲労・ストレス・セックスなどの刺激で再発し、性器・おしり・太ももに水ぶくれやただれができます。再発前には膣入口の違和感、太もも周辺の神経痛のような痛みを感じることが多いです。症状は初感染時よりも軽く短期間で治っていきます。
初感染から1年以内に8割以上の方が再発するといわれています。
<男性>
~初めて感染して症状が出たとき(初感染)~
患部表面のヒリヒリ感やむずがゆさを感じ、2~10日くらいでかゆみを伴う1~2mm程度の水ぶくれや赤いブツブツができます。その後ただれが生じます。
痛みが強く発熱することもあり、太もものリンパ節の腫れ・痛みが生じることもあります。男性の場合は主に亀頭や陰茎体部に症状が出ますが、太もも・おしり・肛門周囲・直腸粘膜に症状が現れるケースもあります。
~感染時には症状がなくその後初めて症状が出たとき~
初感染時よりも症状は軽く、治るまでの期間も短いです。
~再発時~
疲労・ストレス・セックスなどの刺激で再発し、初感染と同じ場所やおしり・太ももに水ぶくれや潰瘍ができます。症状は初感染時よりも軽く短期間で治ることが多いです。
初感染から1年以内に8割以上の方が再発するといわれています。
<喉の症状:男女共通>
~初めて感染して症状が出たとき(初感染)~
・喉の強い痛み
・嚥下痛(えんげつう):唾を飲み込むときの痛み
・高熱
・摂食障害
・首のリンパ節の腫れ
・扁桃が赤く腫れる
・白い膿が出る など
~再発時~
・喉の痛み
・ヒリヒリ感
検査方法
症状が出ていれば、病変部分から綿棒でウイルスを採取し検査を行います。
治療方法
①性器ヘルペスと診断
②内服薬・軟膏の使用
ウイルスの増殖を抑制する抗ヘルペスウイルス内服薬「バラシクロビル(バルトレックス)」「ファムシクロビル(ファムビル)」を服用いただきます。また、症状が軽い場合は軟膏「ビタラビン(アラセナ)」で治療を行うこともあります。症状が重い場合は入院して点滴治療が必要になるケースもあります。
③再検査
病変部分の症状がなくなっているか確認します。
ヘルペスは症状がなくなってもウイルスが神経節に潜伏するため完治することはありません。
尖圭コンジローマ
尖圭コンジローマはニワトリのトサカ・カリフラワー・乳頭によく似たイボが性器や肛門周辺にできる病気です。ウイルスを完全に排除することが難しく、3ヶ月以内に25%ほどの方が再発するといわれています。
症状
<女性>
大陰唇・小陰唇・膣・膣前庭(小陰唇と処女膜の間)・子宮頸部・肛門周辺などのあらゆる部分にイボができます。
<男性>
亀頭・陰茎・包皮の裏側・陰嚢・肛門周辺などのあらゆる部分にイボができます。
検査方法
患部の視診を行い、必要に応じて病変部分から綿棒でウイルス感染細胞を採取します。(ほとんどの場合視診で診断されます。)
治療方法
①尖圭コンジローマと診断
②外科的治療・軟膏の使用
電気メス・炭酸ガスレーザーによる焼却、液体窒素による凍結療法などの外科的治療によってイボを切除することが多いです。また、イミキモド5%クリーム(ベセルナ)を塗布するケースもあります。
③再検査
治癒完了後、最低でも3ヶ月間再発がないことを確認します。
クラミジア
クラミジアは日本国内に40万人以上の感染者がいるといわれている、最も一般的な性感染症です。特に若い年代の人に多く、ほとんどの方が気づかないため知らないうちにパートナーにうつしてしまうことがあります。女性の場合は不妊症に繋がる可能性があるため注意が必要です。
症状
<女性>
・おりものの増加
・下腹部の痛み
・不正出血
・性交痛
<男性>
・尿道のかゆみ
・尿道の不快感
・排尿時の痛み
・尿道から膿(透明~乳白色)が出る
・精巣上体(副睾丸)の腫れ
・発熱
<喉の症状:男女共通>
・腫れ
・痛み
・発熱 など
<直腸に感染した場合:男女共通>
・肛門からの分泌物
・肛門からの出血
・肛門周辺の痛み
・直腸粘膜がデコボコになる
<眼に感染した場合:男女共通>
・めやに
・まぶたの腫れ
・充血 など
検査方法
<女性>
膣ぬぐい液を検査します。
<男性>
初尿を検査します。
<喉への感染>
うがい液やぬぐい液を検査します。
<直腸への感染>
肛門周辺のぬぐい液を検査します。
治療方法
①クラミジアと診断
②内服薬の使用
抗菌薬(抗生物質)を1日~1週間服用していただきます。
③再検査
2週間後にクラミジアが陰性になっているか確認します。
淋病
淋病は男性に多い性感染症です。1回の性行為での感染率は20~50%と高く、クラミジアに同時感染している人が20~30%いるといわれています。喉への感染は症状を感じにくいため、性風俗によるオーラルセックスでの感染が拡大していると考えられています。
症状
<女性>
・おりものの増加、悪臭
・不正出血
・下腹部の痛み
・性交痛
<男性>
・排尿時の強い痛み
・尿道から白い膿が出る
・尿道の不快感
・尿道のかゆみ
・精巣上体(副睾丸)の腫れ
・発熱
<喉の症状:男女共通>
・腫れ
・痛み
・発熱など
検査方法
<女性>
膣ぬぐい液を検査します。
<男性>
初尿・膿を検査します。
<喉への感染>
うがい液やぬぐい液を検査します。
<直腸への感染>
肛門周辺のぬぐい液を検査します。
治療方法
①淋病と診断
②注射・点滴
筋肉注射・静脈注射・点滴などを1~7日間行います。1回の注射で完了するケースもあります。
③再検査
2週間後に淋病が陰性になっているか確認します。
梅毒
梅毒は最近感染者が増えている病気です。昔は不治の病といわれていましたが、現在は早期発見・治療によって完治します。
症状
<第1期梅毒:感染から約3週間後>
・感染部位のしこり
・太ももの付け根の腫れ
<第2期梅毒:感染から約3ヶ月後>
・発疹(手のひら・足の裏)
・赤茶色の盛り上がり
・ピンク色の円形のあざ
・性器、肛門周辺のイボ
・喉の腫れ
・脱毛
<第3期梅毒:感染から約3年以上経過>
・大きめのしこり(ゴム腫・結節性梅毒疹)
<第4期梅毒:末期症状>
・心臓、神経、血管、目などの重い障害
検査方法
血液検査によって抗体の有無を調査します。感染から1ヶ月以上経っていれば検査は可能です。
治療方法
①梅毒と診断
②内服薬の使用
抗菌薬(抗生物質)を2~12週間服用していただきます。
治療期間の目安は下記の通りです。
第1期:2~4週間
第2期:4~8週間
第3期・第4期:8~12週間
無症状で感染時期が不明:8~12週間
③再検査
定期的に検査を受けていただき完治しているか確認します。
HIV
HIVはエイズウイルス(ヒト免疫不全ウイルス)のことです。感染すると免疫力が低下してしまい、いつもなら何ともないようなウイルスや菌でさまざまな病気を発症します。発症した病気が「エイズ指標疾患(23種類)」に当てはまると、エイズを発症したと診断されます。
症状
<感染初期:感染から2~4週間ほど>
・発熱
・喉の痛み
・筋肉痛
・倦怠感
インフルエンザのような症状が見られる場合があります。
<無症候期:数年~10年程度>
症状のない期間がしばらく続きます。
<エイズ発症期>
・ひどい寝汗
・しつこい下痢
・急激な体重減少
このような症状が見られる場合があります。また、さまざまな病気を引き起こし、エイズ指標疾患(23種)に当てはまるとエイズ発症(後天性免疫不全症候群)と診断されます。
検査方法
血液検査によるHIV抗体スクリーニング検査を行います。検査は感染が疑われる性行為から3ヶ月後が推奨されています。
治療方法
①HIVと診断
②内服薬・注射による治療
抗HIV療薬を1日に1~2回服用することでウイルス量を減らし、免疫力を回復させます。
また、最近では1~2ヶ月に1回または6ヶ月に1回の注射によって治療するケースもあります。
カンジダ
カンジダは女性に起こりやすい病気です。膣内の常在菌(カンジダアルビカンズなど)が繁殖することで起こるため性感染症ではありませんが、性行為によってうつるケースもあります。ストレスや過労などで抵抗力が弱まるとカンジダが繁殖しやすいです。男性に感染した場合は尿道や性器周辺の皮膚に異変が起こります。
症状
<女性>
・かゆみ
・おりもの増加(白っぽい、カッテージチーズ状)
・発疹、かぶれ
・性交痛
<男性>
・亀頭の赤みやかゆみ
・水ぶくれ
・皮膚表面がえぐれる
・白いカスのようなものがつく
検査方法
<女性>
腟や外陰部の症状を調べ、おりものの検査によって菌の有無を確認します。
<男性>
綿棒で亀頭周辺の菌を採取し検査します。
治療方法
①カンジダと診断
②軟膏・膣剤の使用
イミダゾール系抗真菌剤の軟膏や膣錠(エンペシド・フロリード・バリナスチン・オキナゾールなど)を1~2週間使用していただきます。女性の場合は通院して膣洗浄を連日受けていただきます。
③再検査
おりものの異常やかゆみがなくなれば完治となります。
性感染症(性病)について知っておきたいこと
症状がなくても感染していることがある
性感染症は無症状のことも多く、知らないうちにパートナーに感染させてしまう可能性があります。また、自身の感染がわかり治療を行ったとしても、既にパートナーにうつしている可能性があるため、同時にパートナーにも検査を受けてもらう必要があります。検査の結果パートナーも陽性であれば、同時に治療を受けるようにしましょう。自分だけが治療を受けて完治しても、パートナーが治療を受けなければ再び感染する可能性があります。性感染症をお互いにうつしあうことをピンポン感染といい、いくら治療を受けてもキリがありません。パートナーがいる方は正直に話し、必ず一緒に検査・治療を受けるようにしましょう。
再発するものもある
性感染症の中には再発するものがあります。症状を抑えることはできても、ウイルスが体内に潜伏して完治しないものもあるため、感染しないように予防することが重要です。コンドームは避妊だけでなく性感染症を防ぐ効果もあるため、性行為の際は必ず使用するようにしてください。
妊娠中に感染すると胎児に影響を及ぼす可能性がある
妊婦さんが性感染症にかかるとお腹の中の胎児に影響を及ぼすことがあります。これを母子感染といい、流産・死産・産まれてからの障害に繋がる可能性があるのです。妊娠中は特に感染に気をつけ、感染してしまった場合は医師の指示に従い治療を受けてください。
治療をしないと症状が悪化する場合がある
性感染症は治療をせずに放置していると症状がなくなる場合があります。しかし、これは自然治癒したわけでなく、ウイルスが体内に潜伏している可能性があるのです。症状がないため治ったと勘違いしやすいですが、体内ではどんどん症状が進行していることがあるため、症状がなくても定期的に検査を受けるようにしましょう。
性感染症(性病)は早期発見・早期治療が重要
性感染症は放置していると不妊に繋がるなど、さまざまなトラブルの原因となります。早期発見・早期治療によって完治するものも多いため、気になる症状がある場合は早めにクリニックを受診しましょう。また、性感染症は症状がなくても検査できるものがあります。最近では「ブライダルチェック」といって、結婚前の男女が性感染症や不妊に繋がるリスクがないかを確認する検査があるため、定期的に受けてみるのもよいでしょう。もちろん結婚の予定がなくても検査を受けることはできるため、健康診断のような感覚で受ける方も多いです。当院でもさまざまな性感染症の検査を行っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
性感染症の施術について
性感染症に関するよくある質問
Q セックスを1回しただけでも感染する可能性はありますか?
A 性感染症は1回のセックスでも感染する可能性があります。性感染症を予防するためには必ずコンドームを使用しましょう。
Q 性感染症は感染後すぐに症状が現れますか?
A 性感染症には潜伏期間があり、症状がすぐに現れないものもあります。不特定多数のパートナーがいる場合はいつどこで感染したかわからなくなるため、性感染症を防ぐためには信頼できる特定のパートナーとだけ性行為をするようにしましょう。
Q 性感染症は何科の病院を受診すればよいですか?
A 性感染症は性感染症内科だけでなく、男性の場合は泌尿器科、女性は婦人科で検査などが受けられます。