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梅毒は急激に感染が広まっている病気です
厚生労働省がまとめた梅毒の発生状況を見ると、梅毒の感染者数は1967年の年間約11,000人が報告されてから減少傾向にありました。しかし、2011年頃からの報告数は再び増加しており、2021年からは急増しています。
梅毒は近年急激に感染者数が増えている性感染症のため注意が必要です。特に男性は20~50代、女性は20代で流行しており、SNSやマッチングアプリの普及によって不特定多数との性交渉の機会が増えたことが原因の一つとして考えられています。
梅毒の感染拡大を防ぐためにも、一人ひとりが正しい知識を持ちきちんと予防することが重要です。
梅毒とは
梅毒とはどのような病気なのでしょうか。まずは梅毒の特徴についてお伝えします。
「梅毒トレポネーマ」という病原体への感染で起こる
梅毒の原因は「梅毒トレポネーマ」と呼ばれる病原菌です。人間だけに感染するという特徴を持っており、遊郭や遊女が出てくる漫画やアニメでは梅毒について描かれたものもあります。遊郭が舞台ということからもわかるように、梅毒は性的接触によって人から人へ感染する性感染症です。
梅毒の名前の由来は「赤い発疹」
梅毒の特徴的な症状に赤い発疹(ぶつぶつ)があります。この発疹がヤマモモ(楊梅)に似ていたため「梅毒」と呼ばれるようになったのです。
感染経路は「キス」「セックス」「母子感染」
梅毒は感染者の皮膚・粘膜・血液・体液に潜んでいるため、性的接触によって感染するケースがほとんどです。膣性交だけでなくオーラルセックスやアナルセックス、キスだけでも感染する可能性があります。また、母親が梅毒に感染することで、胎盤を通して胎児にも感染し、先天梅毒を発症します。感染部位は性器周辺、口腔粘膜、咽頭周囲の粘膜が多く、感染部位から全身に病原菌が撒き散らされ、さまざまな症状を引き起こしてしまいます。
なお、梅毒は熱や乾燥に弱い菌のため、皮膚や粘膜の接触以外で感染することはほとんどありません。そのため、トイレの便座やお風呂、温泉、プール、食器の共用などでうつる心配はなく、過剰な心配は不要です。
感染確率は1回の性行為で15~30%
梅毒は感染者の病変や体液が、粘膜や皮膚にできた小さな傷口に触れることで感染します。感染力は非常に高く、1回の性行為の感染率は15~30%といわれているのです。
性器のほか、肛門や直腸粘膜、口の中や喉からも感染するため、フェラチオやクンニリングスなどのオーラルセックス、アナルセックスでも感染します。そのため、コンドームだけでは防ぎきれないこともあるのです。不特定多数の人と性的接触の機会を持つ人は梅毒の感染リスクが高まりますが、パートナーが一人でも感染する可能性はあるため、誰でも感染することのある病気と認識しておきましょう。
手指の傷から感染するケースもある
梅毒はほとんどの場合性的接触によって感染します。しかし、感染力が強いことから、極めて稀に手指の傷が菌に汚染された物品に触れることで感染したとされる報告もあるのです。基本的に梅毒トレポネーマは低酸素状態でしか長く生存できないため感染経路は限定されますが、こういった事例もあることを理解しておきましょう。
潜伏期間は3~6週間程度
梅毒トレポネーマは感染後すぐに症状が現れるわけではありません。3~6週間の潜伏期間を経てから症状が発現し始めます。
梅毒の症状
梅毒の症状は4つの段階に分けられます。徐々に症状が重くなり、やがて死に至ることもあるのです。昔は治療方法が確立されておらず不治の病といわれていましたが、現在では症状がそれほど進行することはほとんどなく、適切な治療によって完治します。過剰に不安にならず、症状が現れたら早めに病院を受診しましょう。
第1期(早期顕症梅毒)|感染から3~6週間後
・感染部位のしこり
・リンパ節の腫れ
梅毒トレポネーマが侵入した箇所(性器・肛門・口唇など)に小さなしこりができます。これを「初期硬結」と呼び、痛みやかゆみはありませんがコリコリと硬いのが特徴です。
また、潰瘍(皮膚がただれた状態)を伴うしこりができることもあります。
太ももの付け根のリンパ節に腫れが生じることがありますが、ほとんどの場合痛みはありません。
しこりやリンパ節の腫れなどの症状は数週間程度で自然に治っていくため、症状に気づかず梅毒の感染を見落としてしまう方は大変多いです。
第2期(早期顕症梅毒)|感染から3ヶ月以上経過後
・バラ疹(ばらしん)
・扁平コンジローマ
・脱毛
・白斑
・発熱
・全身の倦怠感
感染から3ヶ月ほど経って現れる症状を梅毒の第2期と呼びます。「バラ疹」は梅毒の特徴的な症状で、痛みや痒みのない赤色の発疹が手のひら・手の甲・足の裏・腕・脚・背中・顔など全身に見られます。梅毒トレポネーマの感染が全身に広がることで生じる症状です。喉が腫れることもありますが、症状は数週間ほどで再び消滅していきます。
症状が消えても体内には梅毒トレポネーマは潜伏しているため、完治したわけではありません。症状が消えることで治療は必要ないと勘違いされる方も多いですが、治療しないと治らないため必ず病院を受診しましょう。
また、扁平状のイボや膿を含んだイボ、脱毛、白斑などが起こるのも梅毒の第2期の特徴です。
第3期(晩期顕症梅毒)|感染から3~10年経過後
・ゴム腫(ゴムのようなできもの)
梅毒に感染してから3年ほど経つと症状は第3期(後期)に入ります。第3期まで梅毒が進行した症例はほとんど報告されておらず、基本的には第2期までに治療をされています。しかし、この時期までに治療をしないと硬いしこりやゴム腫と呼ばれる腫瘍ができ、皮膚・骨・筋肉・内臓にまで広がってしまいます。
第4期(晩期顕症梅毒)|感染から10年以上経過後
・心血管梅毒
・神経梅毒
梅毒に感染してから10年以上経つと第4期に突入します。第4期は末期症状が現れ、梅毒トレポネーマが全身の臓器・神経に影響を及ぼし、脳梗塞・神経障害・心不全などに繋がる可能性があります。日常生活に支障をきたし、最悪の場合は死に至ることもあるのです。ただし、日本で第4期まで進行した症例の報告はほとんどありません。
潜伏梅毒
潜伏梅毒とは、梅毒検査は陽性で症状が現れていない状態のことをいいます。主に梅毒の第1期と第2期の間や、第2期の症状が消失してからの時期に見られます。
潜伏梅毒のうち、梅毒感染後1年以内を「早期潜伏梅毒」、感染から1年経過してからを「後期潜伏梅毒」と呼びます。早期潜伏梅毒は感染性があり、後期潜伏梅毒は性的接触での感染がほとんどないといわれています。
神経梅毒
神経梅毒とは、梅毒トレポネーマが中枢神経系にまで広がった状態のことです。
早期神経梅毒は症状がない場合と脳梗塞や髄膜炎を発症する場合があり、晩期神経梅毒は脊髄癆(せきずいろう:体の痛みや歩行障害など)や進行麻痺を引き起こします。どの病期でも起こる可能性があります。
先天梅毒
先天梅毒とは、梅毒に感染した母親から胎盤を通して胎児に梅毒トレポネーマが感染することを指します。いずれの病期でも起こり、胎児の発育遅延や心奇形、小頭症、水頭症などを発症します。また、出生してからは難聴、失明、精神発達遅滞などを発症するといわれています。
梅毒で鼻が落ちるといわれる理由
「梅毒になると鼻が落ちる」と昔からいわれてきましたが、これは梅毒が原因で鼻周辺にゴム腫(第3期の症状)ができ、鼻の骨や皮膚組織を破壊し欠損させたことで「鼻が落ちる」と表現されたと考えられます。
現在では梅毒の第3期まで症状が進行することはほとんどないため、鼻が落ちると過度に心配する必要はないでしょう。
梅毒の検査方法
梅毒の検査方法についてお伝えします。
問診・視診
医師が問診を行い、症状について詳しく伺います。また、病変部を視診にて確認します。
血液検査
梅毒は血液検査で血中の抗体を確認することで診断できます。また、腫瘍がある場合は病変を採取して培養検査を行うこともあります。
血液検査では「TP抗原検査」と「非TP抗原検査」という2つの検査をすることで総合的に梅毒の感染状態を判断することが可能です。
・TP抗体法(TPLA法またはTPHA法):梅毒への感染履歴を調べる、一度感染すると治療を受けても陽性のままになる
・非TP抗体法(RPR法):梅毒の活動性を確認する、治療効果の判断にも使用される
最近では郵送での検査キットも普及していますが、精度が保証されていないものもあるため、気になる症状がある方は必ず病院を受診しましょう。
検査を受けられる時期
梅毒トレポネーマは感染が疑われる時期から1ヶ月以上経過すると検査を受けられます。
梅毒の治療方法
梅毒の治療方法についてお伝えします。
ペニシリン(抗菌薬)を投与
梅毒の治療には抗生物質が用いられます。主に「ペニシリン」が使用され、飲み薬と注射(点滴)の2種類があります。飲み薬の場合は早期梅毒で1日3回、4週間の服用が必要です。
また、最近では新しいペニシリンの注射(持続性製剤)が登場しており、これまでのペニシリンよりも長期間の効果が期待できます。例えば早期梅毒(神経梅毒を除く)の場合は1回の筋肉注射で治療が完了するのが特徴です。
治療方法や治療期間については患者様の症状や妊娠の有無などによって異なり、全ての方が同じというわけではありません。妊婦の場合は赤ちゃんへの感染を防ぐために入院して点滴治療を受けることが推奨されています。治療後は再び抗体検査を受け治療効果を確認します。
なお、ペニシリンによる一般的な治療期間は下記の通りです。
・第1期:2~4週間程度
・第2期:4~8週間程度
・第3期:12週間程度
梅毒は自然治癒しません
梅毒は症状が消失することがあるため治ったように思えますが、治療をしなければ治ることはありません。体内に病原菌は潜伏しているため、症状が現れた場合はすぐに受診し、症状がなくても定期的な検査を受けるようにしましょう。
検査・治療はパートナーと一緒に受けましょう
梅毒に感染するとあわててしまい、誰からうつったのか?誰かにうつしていないか?と不安が出てきます。パートナーがいる場合は言いにくいかもしれませんが、パートナーも感染している可能性があるため、きちんと伝えて検査・治療を受けるようにしましょう。梅毒は早期発見・早期治療で病気の進行を防ぎ、感染拡大を食い止めることが可能です。誰でも感染する可能性のある病気のため、勇気はいりますが、決して隠したりせず必ず伝えるようにしましょう。また、普段から性感染症についてきちんと話し合えるような関係性を築いておけると安心です。
梅毒の予防方法
梅毒は感染が拡大していますが、正しい知識を身につけることで予防が可能です。梅毒の予防方法についてお伝えします。
コンドームを使用する
コンドームを使用することで粘膜への接触を防ぐことができ、梅毒を予防することが可能です。コンドームには妊娠を防ぐ役割もありますが、性感染症予防の面で大きな役割を果たします。避妊のために低用量ピルを服用している方も、性行為の際にはコンドームを使用しましょう。
ただし、コンドームで覆われない部分の病変(皮膚など)から感染することもあるため、コンドームの使用で100%予防できるとは言い切れません。
オーラルセックスやアナルセックスにも注意
梅毒は口や喉の粘膜からも感染するため、オーラルセックスをする際にもコンドームを使うようにしましょう。また、肛門や直腸の粘膜からの感染もあるため、アナルセックスでもコンドームは必須です。オーラルセックスやアナルセックスは妊娠の可能性がないためコンドームを使用しない方も多いですが、無防備なオーラルセックスやアナルセックスは性感染症への感染を助長させてしまいます。
不特定多数とのセックスは感染リスクを高める
梅毒は感染者数が増えていますが、セックスパートナーが多いほど感染のリスクは高まります。特にSNSやマッチングアプリなどで出会い不特定多数の人と性行為をする方は要注意です。性行為をする際には必ずコンドームを使用しましょう。
梅毒の施術について
料金
メニュー名 | 料金 |
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検査費用 | -----円 |
治療費用 | -----円 |
梅毒に関するよくある質問
Q 梅毒は一度感染したら再び感染することはありませんか?
A 梅毒は一度感染して治療を受けても免疫がつかないため、再び感染する可能性があります。また、パートナーが感染している場合はいくら治療をしても感染を繰り返してしまうため、パートナーと一緒に治療をすることが重要です。
Q 梅毒の検査はいつから受けられますか?
A 梅毒は感染が疑われる性行為の日から1ヶ月以上経つと検査が可能です。当院では2種類の検査方法によって梅毒への感染を診断いたします。
Q 梅毒と口内炎の違いを教えてください。
A 梅毒は口の中以外にもしこりや潰瘍ができます。対して口内炎は口周りの粘膜の炎症で多くが痛みを伴い、2週間程度で軽快していきます。2週間経ってもしこりや潰瘍が治らない場合や、口の中以外にもしこりや潰瘍がある場合は梅毒の可能性があるかもしれません。
Q 梅毒とニキビの見分け方を教えてください。
A
梅毒のしこりとニキビはよく似ているため勘違いすることが多いです。自己判断が難しいこともあるため、早めに病院を受診するようにしましょう。梅毒のしこりができやすい部分をお伝えしますので、できものの部位と照らし合わせてご確認ください。
男性:性器周辺の皮膚・ペニス(陰茎・亀頭・亀頭と陰茎の間)
女性:膣の中(子宮頸部)・大陰唇・小陰唇
男女共通:口腔粘膜・咽頭粘膜
Q 梅毒のバラ疹(赤い斑点)とジベル薔薇色粃糠疹の違いを教えてください。
A 突然赤い皮疹が10〜30代の若い方の体幹や四肢に現れる症状を「ジベル薔薇色粃糠疹(じべるばらいろひこうしん)」といいます。梅毒のバラ疹とよく似た症状ですが、梅毒は手のひらにも皮疹が生じるのが異なる点です。
Q 梅毒は何科の病院を受診すればよいですか?
A 梅毒は性感染症内科(性病科)、男性なら泌尿器科、女性なら婦人科を受診してください。皮膚に症状が出ている場合は皮膚科でも感染しているかどうかわかるでしょう。
Q 梅毒は家族にうつるのでしょうか?
A 梅毒は性的接触によって感染する病気のため、日常生活で家族に感染することはほとんどありません。ただし、極めて稀に手指の傷から感染したという報告があります。
Q 梅毒のワクチンはありますか?
A 梅毒には予防するためのワクチンはありません。また、一度梅毒に感染すると抗体は一生体内に残り続けるといわれています。しかし、梅毒は1〜2期(初期)にきちんと治療を受けることで完治するため、早期発見・早期治療が大変重要です。少しでも梅毒の可能性がある場合はすぐに病院を受診してください。
Q 梅毒の治し方を教えてください。
A 梅毒はペニシリンと呼ばれる抗生物質を投与して治療を行います。
Q 梅毒の即日検査は受けられますか?
A 当院では梅毒の即日検査を行っておりますので、疑わしい症状がある方は早めに当院までご相談ください。
Q 梅毒の完治後いつから性行為は可能ですか?
A 梅毒は治療終了後2〜4週間経ってから確認のための検査を行います。そこで治療が完了していれば性行為が可能になります。
Q 陰部がかゆいのですが梅毒の可能性はありますか?
A 梅毒の症状に「しこり」がありますが、基本的にかゆみや痛みは伴いません。そのため、陰部のかゆみは他の性感染症の可能性が考えられます。